透き通った・・・

ある日、電車に乗って移動していた。

午後の４時半過ぎ。電車の中は、まだ帰宅時間ではないものの、
昼間ののんびりした雰囲気はなく、大方の席が埋まっている。

つり革にぶらさがって、ふと下を見ると女性が座っている。

きりっとした黒いワンピース。

買い物の帰りか、紙袋を膝の上に載せ、うすい色合いの
カーディガンを持ち、きっちりと足をそろえて。
眠っているのか、目を閉じている。

黒い半袖のワンピースは、白い肌とのコントラストが際立っていて。
白い肌に見とれていると・・・

右腕の肘と掌の間くらいに、赤く、くっきりと跡がついている。

白い肌の上にくっきりと２，３重に何かが巻きついたような跡。
そう、丁度、縄目を写したような。

その跡に釘付けになっていると、閉じていた目を開かれる。

視線を気取ったのかと思いきや、その視線の先は、右腕にある
その跡に注がれているようだ。

やがて、左手の指先でその跡をそっとなぞっている。
何かを確かめているのだろうか。

やがて、羽織っていたカーディガンでその跡を隠して
電車は駅に着き、その女性は席を立って降りていった。

あの跡は、なんの跡だったのだろう・・・

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